2013年09月25日

『デコミッショニング技報』、『季報 エネルギー総合工学』

decommissioning.jpg
デコミッショニング技報|RANDEC-公益財団法人 原子力バックエンド推進センター
http://www.randec.or.jp/publish/gihou.html

 福島第一原子力発電所の事故により、その分野の専門家にしか馴染みの無かった「廃炉」という言葉が一般的に使われるようになりました。日本の原子炉の解体の事例として日本原子力研究所(当時)のJRR-3、JPDR、原子力船「むつ」があり、現在、日本で最初の商用炉の東海発電所(ガス炉)の廃炉措置が進行中です。

■ デコミッショニング技報
 原子炉解体技術については(財)原子力施設デコミッショニング研究協会(その後、(財)原子力研究バックエンド推進センターに改組)から1989年より『デコミッショニング技報』が発行されていて、一般の人もその雑誌をpdfファイルでダウンロードして読むことができます。
 いままでの日本の原子炉の廃炉技術は正常に停止され、解体環境などが明確なものに対してのものでした。そして福島第一原子力発電所のように事故で壊れて放射性物質の分布状況もわからない条件に適用できるものではありません。しかし、『デコミッショニング技報』での解説は廃炉技術の開発に必要な技術を理解する上でとても参考になります(本blogの筆者がロボットとの関わりをもつことになったのは廃炉技術の開発からでした)。
 福島第一原子力の事故により大きな負の遺産が残されました。しかし、人々が安心して暮らせるようにするためにその廃炉技術の開発は避けて通れない道です。『デコミッショニング技報』には解体に関わるロボットについても紹介されています。
 多くの人に読んでいただけたらと考える技報です。

■ 季報 エネルギー総合工学
 一般財団法人エネルギー総合工学研究所の『季報 エネルギー総合工学』にも「実用発電用原子炉廃炉技術調査」のように廃炉に関わる内容が掲載されています。

----------
「実用発電用原子炉廃炉技術調査」(季報 エネルギー総合工学 Vol.26 No.2)
http://www.iae.or.jp/publish/kihou/26-2/07.html
エネルギー総合工学研究所季報エネルギー総合工学バックナンバー
http://www.iae.or.jp/publish/kiho_b.html
東海発電所の廃止措置 日本原子力発電株式会社
http://www.japc.co.jp/project/haishi/
福島第一原子力発電所 > プレスリリース/ホームページ掲載情報|東京電力
http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/press_f1/2013/2013-j.html
廃炉の道険しく 東海原発、解体が本格化 茨城新聞ニュース
http://ibarakinews.jp/news/news.php?f_jun=13689728371212
posted by M. Ichikawa at 17:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

2008年11月29日

ベッドサイドの筋電図ハンドブック - 診断の要点と手技 -

electromyographer.jpg
「ベッドサイドの筋電図ハンドブック - 診断の要点と手技 -」(第2版)
1990年、メディカル・サイエンス・インターネショナル
ISBN 4-89592-016-X
Rajesh K. Seethi, Lowery Lee Thompson 著
"The Electromyographer's Handbook (Second Editon)" (1989)の翻訳

 「全日本科学機器展in東京2008」に行った後、いつもの神田古書街の店へいきました。そして外に並べられていた本の背表紙を眺めていて「筋電」の文字が目に入り、手にとりました。それが上の「ベッドサイドの筋電図ハンドブック」でした。
 東京大学精密機械工学専攻の横井浩史准教授を中心とした筋電の翻訳ともいえる手法を用いた筋電義手制御の研究、筑波大学大学院システム情報工学研究科の山海嘉之教授を中心としたロボットスーツHALの研究など、筋電を入力とするロボット関連研究は発展段階を迎えているといえます。しかし、調べた範囲のME関係の本では筋電について詳しく解説したものがなく、困っていました。
 無造作に並べられた本の中にあった人体の各部の筋電について詳しく解説した本書、まるで宝物を見つけたような気分です。だから古書店通いはやめられません。
posted by M. Ichikawa at 02:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

2008年07月29日

design news Japan 2008.8

 "design news Japan"(2008.8)が送られてきました。
Cover Storyは「美しきモーションMOMAに見るメカトロ芸術」。MOMAの exhibitionの"Design and the Elastic Mind"で展示されたものを紹介するものでFresto社のオニイトマキエイ・ロボット、そしてMITの足首部分の電動義足など興味深い記事です。
 しかし、本号が手元に来て最初に読んだのは、「自動調律するギブソンのロボットギター」の記事でした。(昔、ギターを弾いていたことから、つい・・。) 確かにギターは弾いているうちから音程が狂ってきます。この限定販売されたロボットギター(レス・ポール込み)の$2499が安いか、高いかは人によって評価が違うと思いますが、プロならば必需品でしょう。

Design and the Elastic Mind
http://www.moma.org/exhibitions/2008/elasticmind/

The Museum of Modern Art
http://www.moma.org/

Design News Japan
http://www.designnewsjapan.com/
posted by M. Ichikawa at 09:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

2007年01月08日

愛知万博 最新ロボットガイド

 「愛・地球博」(愛知万博)は2005年3月25日から9月25日まで開催され、2千2百万人を越える入場者があったとのこと。会場で見ることのできたロボット、また、6月9日〜19日の「プロトタイプロボット展」で登場したロボットは下記のリンク先に紹介され、また、主催者のホームページで「ロボット」として入力すると各種の情報が得られます。
aichi-expo.jpg
『ロボコンマガジン別冊 ロボットガイドブック』、オーム社、1238円(税別)

【リンク】
・ロボコンマガジン(オーム社)
 http://www.ohmsha.co.jp/robocon/
・愛・地球博 (主催者)
 http://www.expo2005.or.jp/jp/
・愛・地球博 次世代ロボット (NEDO)
 http://www.nedo.go.jp/expo2005/robot/index.html
・愛・地球博 プロトタイプロボット (NEDO)
 http://www.nedo.go.jp/expo2005/robot/prototype/prototype.html
・トヨタ・パートナーロボット
 http://www.toyota.co.jp/jp/special/robot/


posted by M. Ichikawa at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

建設ロボット大図鑑

 1980年代末から1990年代初頭は日本のバブル経済により建設ラッシュの時代でした。その中で建設労働者の不足が課題となり、ゼネコン(総合建設業)各社を中心として施工の機械化が取り組まれましたが、その中に建設ロボットがありました。「建設ロボット大図鑑」は彰国社の「施工」の別冊としてゼネコン各社の技術者の協力を得て編集されました。バブル期以降の産業のおかれた状況の中で建設ロボットの研究開発は低調となりましたが、建設現場というロボットの作業環境を十分に整えられない条件下での様々な取組みは、同様のロボットの作業環境を整えられない分野へのロボット応用のヒントになると考えられます。
 研究開発において既往研究の調査は不可欠です。当たり前のことですが、「過去の研究開発の事例を調査したのかしら」と思うものの発表があるのも事実です。組織の中に過去の研究開発の知識のある人材がいるうちはよいのですが、世代の交代した時、そのようなことが起きる危険性が増します。このような本はそのような轍を踏まないための、ひとつの手がかりになっていくと考えられます。
construction-robots.jpg
「建設ロボット大図鑑 - 全自動化施工への羅針盤 -」、1993年、彰国社
posted by M. Ichikawa at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

火星探査ローバの本

  全ての女性エンジニアに贈りたい本として "Managing Martians" を紹介しました。この本は1997年のNASAの火星探査ローバ Sojourner についても書かれていますが、Donna Shirleyの自叙伝に位置付けられるものです。これに対してNASAのSenior Systems EngineerであるAdrew Mishkinの"Sojourner - An Insider's View of the Mars Pathfinder Mission"はその副題の通り、火星探査ローバの開発と探査について詳しく書かれた本です。一方、2004年のNASAのローバによる火星探査についてScientist である Steve Squyresによって書かれた "Roving Mars - Spirit, Opportunity, and the exploration of the red planet"はローバそのものよりもミッション全体の流れや探査の内容を中心に記述されています。そしてSpirit と Opportunity の旅はまだ、終わっていません。
Mars-rover-books.jpg
Adrew Mishkin, "Sojourner", Berkley Books, 2003 (Left)
Steve Squyres, "Roving Mars", Hyperion books, 2005 (right)

【リンク】
・Mars Pathfinder ( NASA/JPL )
 http://marsprogram.jpl.nasa.gov/MPF/
・Mars Pathfinder Mission - Rover Sojourner -
 http://marsprogram.jpl.nasa.gov/MPF/mpf/rover.html
・2003 Mars Exploration Rovers
 http://www.jpl.nasa.gov/missions/current/marsexplorationrovers.html
posted by M. Ichikawa at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

2007年01月07日

Managing Martians (全ての女性エンジニアに贈りたい本)

 1997年、NASAのJPLは Pathfinder ミッションで小さな6輪の火星探査ローバ Sojourner を火星に送り込みました。このミッションで着陸機が送ってきた画像などの情報、そしてローバの探査の有用性の実証はその後のNASAの火星探査に大きな影響を与えています。 Donna Shirleyは、JPLの火星探査プログラムのマネージャとして ほとんどが男性のSojournerを作ったチームを率いました。また、彼女はNASAのこのようなプログラムを率いた最初の女性でもありました。
 本書は彼女の自叙伝ですが、ローバの開発の歴史やNASAのプログラムの決定方法、また、"Better, faster, Cheaper"のもとに、モータを如何に調達しなかなどの興味深いエピソードなどが含まれています。
managing-martians.jpg
Donna Shirley, "Managing Martians", Broadway Books, 1998

【リンク】
・Mars Pathfinder ( NASA/JPL )
 http://marsprogram.jpl.nasa.gov/MPF/
・Mars Pathfinder Mission - Rover Sojourner -
 http://marsprogram.jpl.nasa.gov/MPF/mpf/rover.html
・Women In Science and Technology (インターネットリソースとしてリンク先を紹介)
 http://www.hq.nasa.gov/office/hqlibrary/pathfinders/women.htm
・Extraordinary Women Engineers
 http://www.engineeringwomen.org/
posted by M. Ichikawa at 23:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

HANDBOOK OF INDUSTRIAL ROBOTICS

 「新版ロボット工学ハンドブック」の英語名は "Robotics Handbook -- 2nd ed."です。 "robotics" と "handbook " を書名に含む本を amazon.com で検索すると何冊か登場します。 "Handbook of Industrial Robotics"もその一冊で、1985年版のIsaac AsimovのForewordが1999年の2nd ed.でもそのまま収録されています。総1348ページのうち、多くのページがロボット応用に割かれています。日本ロボット工業会の「ロボットハンドブック」でも応用事例が収録されていますが、全体ページの制約もあり、事例を多くして簡潔に解説という編集でまとめられているようです。ロボットの導入を検討する場合、日本ロボット工業会の隔月刊の機関誌「ロボット」のバックナンバーに収録の応用事例が参考になります。工業会のホームページで目次を収録したpdfファイルがダウンロード可能です。
hb_industrial_robo.jpg
Handbook of industrial robotics / edited by Shimon Y. Nof. -- 2nd ed. (1999)

【リンク】
・日本ロボット工業会
 http://www.jara.jp/publication/01.html
posted by M. Ichikawa at 23:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

ロボットハンドブック(もう一冊のロボットのハンドブック)

 「新版ロボット工学ハンドブック」は日本ロボット学会編ですが、日本ロボット工業会からもハンドブックがでています。書名は「ロボットハンドブック」。1985年にロボット技術便覧編集部会により「産業用ロボットハンドブック」が発行されて以来、内容も対象読者をロボットのユーザ、システムインテグレータに絞った大改訂を受けて2001年に第6訂版が発行されました。そして2005年に第7訂が発行されました。

jara-handbook2005.jpg
日本ロボット工業会「ロボットハンドブック」(2005年版) (374ページ)、2,500円(税込み)

【リンク】
・日本ロボット工業会
 http://www.jara.jp/
posted by M. Ichikawa at 23:46| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

福祉住環境の本

 福祉分野のロボットを研究開発する場合、「福祉機器に関する情報リソース」で述べたように実際に使われている福祉機器に関する知識も不可欠です。また、「国際福祉機器展」では建築設備の展示も含まれるように建築環境に対する知識も不可欠です。
 大野隆司他の執筆による「福祉住環境」(市ヶ谷出版、2520円(税込))は大学・短大・専修学校で初めて「福祉住環境」を学ぶ人のための教科書として編集された本で、福祉住環境の考え方、高齢者・障害者の身心特性と環境整備のポイント、福祉用具の活用、福祉住環境整備実現のための基本的技術と知識、福祉住環境事例集の5章で構成され、建築環境を含めて体系的に学ぶことができます。なお、この本は「福祉住環境」は東京商工会議所の福祉住環境コーディネーター検定試験の試験内容に対応するもので、「勉強のついでに資格取得も」ということであれば、東京商工会議所の公式テキスト(3級が2000円、2級が4200円)で勉強するのも実利的といえます。
assist-house-text.jpg
福祉住環境コーディネーター検定試験(2級公式テキスト)
posted by M. Ichikawa at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

福祉機器に関する情報リソース

 「ロボットを福祉分野へ」という目標のもとに様々な研究開発が行われています。しかし、この分野で現在、どのような機器や道具が使われているかを知らないで研究開発に踏み出すのは正しいアプローチとはいえません。やはり、最低限の知識は得て目標とする研究開発の有効性を評価する必要があります。
 (財)保健福祉広報協会主催で毎年、東京ビックサイトで開催される『国際福祉機器展』は国内外の福祉機器などが展示され、効率よく情報を収集することができます。また、展示会にあわせて発行される書籍は情報源としても非常に有用です。次に書籍のいくつかを紹介します。

■ 「福祉機器 選び方・使い方(改訂版)」((財)保健福祉広報協会編)
 2005年9月25日発行、100円(税込)・・・毎年発行

 ベッド編、福祉車輛編、入浴機器編、トイレ・排泄用品編、住宅改修編、コミュニケーション編、車いす編、自助具編の8編がカラー印刷で114ページを使ってわかりやすく解説されている。国際福祉機器展で100円で販売されているが、この機器展開催後も(財)保健福祉広報協会から直接、購入することが可能である。
HCR2005-book1.jpg

■ 「福祉機器カタログ集」((財)保健福祉広報協会)
 国際福祉機器展で展示される様々な福祉機器のカタログ、2005年度版は385ページで販売価格は定価1,000円(税込)。上記の「福祉機器 選び方・使い方」の本では具体的な製品がわからないが、本カタログによりこの情報を補足することができる。姉妹書として「福祉機器企業要覧」(定価1,500円(税込))が発行されている。なお、(財)保健福祉広報協会のホームページ上で「H.C.R.インターネット福祉機器情報サービス」からも機器を調べることが可能であるが、大量の情報を検索することを考えると書籍の形態での本書は非常に使いやすいものである。
HCR2005-book2.jpg

■ こころリソースブック編集会
「福祉情報技術(e-AT)製品ガイド - ココロリソースブック2004-2005年版-」、2004年10月発行、定価2,875円(税別)
 香川大学教育学部中邑研究室のこころリソースブック編集会がまとめた障害者のコミュニケーションを支援する機器の338ページのカタログ。福祉情報技術(e-AT)に関する情報と相談については「こころWeb」にアクセスされたい。
私的な思い出であるが、Apple コンピュータのMacintoshを使って様々なコミュニケーションツールが登場した時、新しいコンピュータの時代に入ったことに実感したものである。
kokoro-resource-book.jpg

【リンク】
・(財)保健福祉広報協会
 http://www.hcr.or.jp/
・アイムファイン(福祉機器ユーザーを対象としたコミュニケーション誌を発行)
 http://www.im-fine.net/
・「こころWeb」
 http://www.kokoroweb.org/
posted by M. Ichikawa at 23:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

リハビリテーションレジデントマニュアル

 専門書店では一般書店では取り扱われない本が並べられています。その店内の書棚で、その専門外の人間が効率的にその分野のことを学ぶのに適した本を見つけることができます。「リハビリテーションレジデントマニュアル」も神田の専門書店で見つけた本です。障害の種類とリハビリテーションを中心に、「レジデント必読図書」といったものまで含んで381ページにコンパクトにまとめられています。
 「システム設計」というと、ソフトウェアシステムを対象に考えられがちですが、人間・機械システムを含んでその対象領域は極めて広いものです。よい設計者は、クライアントのいうことをそのまま、図面にするだけではなく、そのことばの背景にあることまで理解して図面化する能力を持ちます。クライアントに事細かに聞いてものをつくりあげ、それがクライアントの望むものと違っていた場合、その相違点に対して「そのような話は聞いていなかった」とするのはどうでしょうか? コミュニケーション能力もまた、よいシステム設計者には欠かせないものです。
 本書は111×182×15[mm]のポケットに入いるサイズ。福祉関係のロボットの研究開発に取り組む研究者・技術者に読んでもらい、そのロボットを使用する福祉関係者の要求のことばの背景にあるものを理解するのに役立ててもらいたいと思う本です。

reha-manual.jpg
千野直一・木村彰男編集「リハビリテーションレジデントマニュアル(第2版)」、2001年、医学書院
posted by M. Ichikawa at 23:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

機械設計心得ノート、続・機械設計心得ノート

 設計図に書かれた線、数値に意味のないものはありません。例えば軸の図面で軸受が入る部分は、メーカー推奨の寸法と加工形状が使われている、といった具合です。しかし、「図面を見ればわかる」と設計を学ぼうとする者を突き放すのはどうでしょうか。確かに、ベテラン設計者の知識、ノウハウを文字として全て書いて伝えるのは不可能なことで、また、文章を書くことが不得手な優秀な設計者もいます*。しかし、だからといって何も伝えないのは合理的な対応とはいえません。また、研究開発のために機械装置をつくりたいが、その設計について相談する相手がいないという状況におかれた研究者や技術者もいます。
 「機械設計心得ノート」、「続・機械設計心得ノート」は機械設計に関するノウハウがつまった本です。語学に例えれば、ボルトや軸受に関する製品知識、力学の計算結果などが単語とすれば、これらを意味のある文章とする文法に相当するのが、本書で取り上げる機械設計心得的なもの、そして設計製図はこれを正しく伝えるワープロのような存在と思います。なお、図面に書かれたものを製作するメーカーにとって、図面が全てですので、図面を読んだ人が「?」とならないように出図時のチェックで書き漏らしがないように。(設計者は書いたつもりになっていたが、書かれていないということが時々ありますので。)

md-note1.jpg
渡辺秀則:「機械設計心得ノート」、1983、日刊工業新聞社
md-note2.jpg
渡辺秀則:「続・機械設計心得ノート」、1988、日刊工業新聞社

*: 人工知能研究としてエキスパートシステムが過大な期待を集めた後、沈静化してしまったのもこの点があったのではと思います。
posted by M. Ichikawa at 23:21| Comment(0) | TrackBack(1) | 書籍などの紹介

センサ・計測器データファイル(メカトロニクス臨時増刊号)

 新しい計測の要求がある都度、新しいセンサが生み出され、そのインテリジェント化も進んでいることから、センサ技術の全貌を捕まえるのは困難なものがあります。「メカトロニクス」の増刊号として発売されているのが、「センサ・計測器データファイル」。センサの種類と特徴、連絡先が約500ページにわたって掲載されたもので、計測の原理などは一切、解説されていませんが、「こんなセンサはないか?」と調べる時に重宝します。なお、センサの世界は技術開発の速度が速いため、この本を参考としながら、「さらによいセンサは出ていないか」と調べることが必要です。

mechatronics-sensor.jpg
「センサ・計測器データファイル2005-2006」、2005年、技術調査会

【リンク】
・技術調査会
 http://www.gicho.co.jp/
posted by M. Ichikawa at 23:16| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

設計での商報の利用

 機械設計でボルトの長さを決める場合、標準品から選定すれば安価にボルトを入手できることからJISで記載された推奨呼び長さから選ぶことになります。これに外れた長さのボルトを用いる場合、少し長い標準品のボルトを入手して加工することになりますが、加工手間を考えるとかなり高額なものとなってしまいます。
 これと同様のことが新たに機械を設計する場合にもあります。ボールねじなどの機構部品の場合はわかりやすいのですが、それ以外に市場には様々な機構部品が機械にそのまま、組み込める形で販売されていることが多くあり、これを利用して設計に組み込めば短期間に費用も抑えて機械を実現できることが少なくありません。このような設計ができるかどうかは、市場に出回っている部品に関する知識の量にかかります。
 機械設計に携わっていたとき、役に立ったのが「商報」でした。これは伝動機器の総合商社の発行する一種のカタログですが、昼休みの時間などにページをめくっては「このようなものもわざわざ設計しなくても標準品として使える」といった知識を仕入れ、自分で図面を書いて製作しなければならない部品点数を減らすのに喜びを感じていたものでした。また、最初、自分で考えた機構のアイディアも、商報やこれに掲載されていない専門メーカーのカタログを見て、「別のアプローチとなるけれどこの機構部品でも同じ機能を実現でき、安価にできる」として白紙にもどしてやりなおしたこともありました。現在はインターネットで商報と同様の情報を入手できることから、わざわざ入手する必要はありませんが、一度、そのホームページでどのような部品があるか、ざっとながめておくことも設計の役にたちます。
 なお、機械設計をする場合、時間の制約、あるいは「隙間を通せばよいだろう」と軽く考えて、機構部の設計に集中してモータへの配線処理がおろそかになってしまうことがあります。カバーなどで配線が隠蔽される構造ならばよいのですが、可動部分がある場合、ケーブルウェイなどの部品が最初から取り付くことを前提に設計の必要があります。美しい製品をつくりあげるために機構部品だけでなく、配線材料などに関する知識も不可欠といえます。

takatsu-syoho.jpg
商報(高津伝動精機)

【リンク】
・高津伝動精機
 http://www.takatsu.co.jp/
・MISUMI (FA用メカニカル標準部品、メカニカル加工部品、他)
 http://www.misumi.co.jp/
posted by M. Ichikawa at 23:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

機械設計を学んだ本

 機械工学は基礎の講義を受けた程度、機械設計について専門的に学んだことはありませんでした。そして電気屋の立場から「それは機械屋の仕事」という見方をしていたものでした。しかし、仕事として取り組まねばならなくなりました。
 「機械の要求機能と制約条件の明確化 → それらを実現する機械の基本的なアイディアの検討 → 設計計算 → 機械設計」という一連の流れは理解し、また、これらは一方向に流れるのではなく、途中のステップの内容によっては以前のステップに戻ってやり直しが必要なことは知識としては理解していました。しかし、具体的に自分の手でそれらをこなさなければならないとなって「どこから手をつけたらよいのだ・・・」というのがその時の偽らざる気持ちでした。特に設計計算の部分がそうでした。
 その時に私に光明をもたらしてくれたのが大西清の「電動ウインチの設計製図 - フローチャートによるシステム設計 -」(1986年、理工学社、2,100円(税込))でした。私はソフトウェア開発もしていたことから「書名から電動ウィンチを設計する人のための参考書かもしれないけれど、本文にフローチャートを取り入れて書かれているから、これだったらわかりやすいかな・・・」と本書を入手しました。そして読み進めるうちに、書名は先入観を与えるだけのもので内容は全ての機械の設計に共通し、「このような手順ですすめれば、機械の設計算書や設計図を作成することができる」ということを理解することができました。実際、本書のおかげでいくつもの機械設計を行うことができました。若い同僚に「良い本だから」と手元にある本を渡したり、新たに購入して贈ったりもしました。私の機械設計の原点はこの本にあるといっても過言ではありません。

 大西清著のもう一冊の本、「JISにもとづく機械設計製図便覧」、この本と商報、そして商報に掲載されていない部品の資料を手元に置いて設計製図をしました。なお、この本では対応できない特殊な機械はそれに関わる様々な文献を集めて、設計計算の手順の裏づけをしていましたが、この本だけでかなりの実務に対応できました。この本の編集の確かさのあらわれかもしれません。また、この本は日本の書籍に珍しく定期的な改訂が行われていて、私も版が新しくなる度に購入し、下の写真は仕事で最後に使っていた8版(1993年)。現在は10版(2001年)で価格は3,990円(税込)。非常にコストパフォーマンスが高い本です。

machine-design-hb.jpg
大西 清、「JISにもとづく機械設計製図便覧」、理工学社
posted by M. Ichikawa at 23:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

精密の歴史

 「機械がよくなければ、いくら制御で頑張ろうとしても限界がある」

 これが機械と制御の両方に携わる人の共通の理解です。本書はChris Evansの"Precision Engineering : An Evolutionary View"の訳書で、「『機械をつくる機械=マザーマシン(工作機械)』の精度を如何にあげてきたか」、また、そのための計測のための様々な器具などを含めて解説しています。本文で解説される様々な課題とそれに対する対策は、今日の機械設計でも参考となるものです。
 この本と一緒に工業技術博物館(日本工業大学)、ミツトヨ博物館の見学をお奨めします。

precision-engineering.jpg
クリス・エヴァンス著 橋本洋/上野滋訳「精密の歴史」(1993年、大河出版)


【リンク】
・工業技術博物館(日本工業大学)
 http://www.robotics-handbook.net/museum/moit/index.htm
・ミツトヨ博物館
 http://www.robotics-handbook.net/museum/mitsutoyo/index.htm
・産業技術ネットワークミュージアム(中部経済産業局)
 http://www.ncsm.city.nagoya.jp/nwm/
posted by M. Ichikawa at 23:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介

精密工学会生産自動化専門委員会DVD資料集

 精密工学会生産自動化専門委員会によってまとめられた「研究例会・研究発表会DVD資料集 1969〜2004」が2005年3月から入手可能となりました。これは専門委員会の研究発表会資料、研究例会前刷集の約300冊、総ページ10,000ページ以上(2,068の発表)の内容が収録されたものです。専門委員会では利用方法として次のものをあげています。

1) 日本のおける自動組立を中心とした生産自動化関連の資料収集媒体としては、充実したものとなっており、技術史的観点からも多くの写真、図面などは、非常に貴重な資料
2) 工学系学生の研究資料
3) 新規テーマ着手の遡及的調査資料
4) 新規生産装置計画の参考資料。多くのヒントを得ることが可能

 「メカニズムの事典」(1985年、理工学社)は、昔、機械設計屋の座右の書とされていた「機械の素」を復刻した改題縮刷版ですが、生産自動化も同様に先人の知恵の上に現在があることから、上記のような多量の文献情報をDVD(価格10,000+送料)として入手可能としたことは、生産の自動化などに関連する研究者、技術者に対する素晴らしいプレゼントといえます。
 DVDの入手方法は精密工学会生産自動化専門委員会のホームページ(http://www.seisanjidoka.sakura.ne.jp/index.html)に紹介されています。

jspe-dvd.jpg
posted by M. Ichikawa at 22:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 書籍などの紹介